「鍼灸治療による陣痛促進の効果について」

2004年(社)全日本鍼灸学会千葉大会発表

《はじめに》

 我が国における帝王切開率は、1984年から1999年までの15年間で7.3%から14.7%と、ほぼ倍になっている。一部の要因として、高齢産の増加や、骨盤位の帝王切開率の上昇などがみられるようである。また、医療機関によっては、帝王切開率が20%を超えるところもあるようである。しかし、帝王切開をできるだけ避けたいと思う人や、陣痛誘発剤などの薬剤の使用も控えたいと思う妊産婦が多いのも事実と思われる。

 当院では、近隣の助産院「マタニティ・アイ」からの紹介などで、過去10年間に約170人の妊産婦の治療にあたってきた。今回は、過去7年間で陣痛促進治療を行なった63症例について、その内容を検討した。

《対象》

 1997年から2003年までの7年間において、陣痛促進を目的として来院した、妊娠38週から41週+5日までの63名(初産婦43名、経産婦20名)。最少年齢20歳、最高年齢40歳、平均年齢は28.3歳。平均来院時週数は40週+6日。

《方法》

 治療穴は、初診時は三陰交、至陰、太谿または太白。本治法で証をとり、腎虚証の場合は太谿、脾虚証の場合は太白を選穴。セイリン製40mm・16号鍼を使用。深さ2〜3mm程度で15〜20分置鍼。初診時はあまり強刺激にならないように注意する。
 2診目以降は、初診時の経穴に加えて足三里。精神的緊張が強い場合には内関。三陰交にカマヤミニ灸を併用。また子宮点・神門に耳穴圧迫療法を行なった。
2診目の問診時は、必ず前回終了後、お腹の張りがあったかどうかを確認し、治療中も胎動を確認しながら刺激量を調節する。
体位は仰臥位で、背部をクッション等で高くし、膝下に枕を入れて軽く屈曲させる(下大動脈を圧迫し、息苦しくなるようであれば側臥位で行なう)。
 治療間隔は、週2〜3回、41週を過ぎた場合は毎日もしくは一日おきとした。

《結果》

 初産婦43名中、37名が助産院での経膣分娩、2名が病院での経膣分娩、4名は帝王切開。経産婦20名中、全員が助産院での経膣分娩となり、約9割の妊産婦が自然分娩に至った。帝王切開となった4名の内訳は、前期破水、骨盤不適合、羊水過小、妊娠中毒症であった。
 自然分娩者の平均治療回数は2.5回。中でも2回が22人(39%)と最も多く、続いて1回が12人(21%)であった。すなわち、1回から2回の治療で、約6割が出産に至った。
 同じく自然分娩者の初診から出産までの平均経過日数は5.2日。最も多いのが5日の10人で、続いて3日・4日がともに8人であった。すなわち、初診から5日以内で約6割が出産に至った。

《考察と結語》

 鍼灸刺激は、自律神経の調整や、血流量の増加、子宮収縮に影響を与えるといった研究結果が過去にも報告されているが、今回の症例からも、鍼灸治療による陣痛促進は一定の効果を示したことが観察されたのではないかと思われる。薬剤の使用や、帝王切開をできるだけ避けたいと希望する妊産婦にとって、鍼灸による陣痛促進は選択肢のひとつになると思われる。

《参考文献》

志村まゆらら: 子宮の神経性調節と鍼灸、全日本鍼灸学会誌、
51(4):44-46,2001
矢野 忠ら: 産科領域の鍼灸治療、全日本鍼灸学会誌、
51(4):55-63,2001
武藤由香子: 産科の鍼灸治療症例、鍼灸OSAKA、
15(3):251-254,1999
鈴木俊二ら: 我が国における帝王切開率の変遷と適応の変化、周産期医療
33(8):921-926,2003

《謝辞》

今回の研究に際しまして御協力いただいた、助産院マタニティ・アイの春日井院長、成瀬助産師、並びにスタッフの方々に厚く御礼申し上げます。

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