万葉の時代、「にほふ」という言葉は
嗅覚を表す言葉ではなく、
目で見た色の美しさを表す
視覚に関する言葉だったそうです。
いにしへの
奈良の都の八重ざくら
今日九重に 匂ひぬるかな
こちらは、百人一首の和歌のひとつですが、
古都の都の奈良から八重桜が贈られ、
今日はこの平安の都の宮中で
美しく咲いているなぁ
という現代語訳がされています。
「九重」は中国では宮中を示しており、
八重桜の「八重」との数の対比をしています。
「今日」は、
「京」との意味をも含ませた音で重ねていて、
「いにしへ」と「今日」という時間の対比もされています。
この和歌そのものから
言葉の美しさと洗練さを感じさせられますよね。
そこで最後に
「美しさ」を「匂ひ」と表現されたことで
時間と場所の概念を覆されるような
自分の限界を超えた想像力を掻き立てられる
言葉として、さらに歌の深みが増されます。
視覚より嗅覚での表現は、
明確さや境界線が曖昧である分、
想像が深まるものですよね。
昔の人の言葉での表現力や想像力のセンスには敵わないものがあります。
先日はバレエを鑑賞しましたが、
それはもう言葉では表せないほどの
優雅なひとときを過ごしました。
視覚と聴覚を超えて心に響きます。
日常から少し乖離するような感覚になることがまた心地よいものです。
耳で見る
鼻で味わう
目で触れる
口で聴く
皮膚で嗅ぐ
言葉にしてみると超人のような技に
聞こえますが、
無意識でも少しは働かせているものでは
ないでしょうか。
意識してみると
自分の世界が広がるように思いました。
高橋千香子
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